内視鏡的静脈瘤結紮術や硬化療法

更新日:2021年04月01日

内視鏡的静脈瘤結紮術や硬化療法

はじめに

食道静脈瘤は肝硬変にともなう門脈圧亢進症が原因で発生します。日本消化器内視鏡学会が定める治療ガイドラインでは、(1)出血静脈瘤 (2)出血したことがある静脈瘤 (3)大きな静脈瘤やred-color sign陽性(静脈瘤上の粘膜が赤く腫れている状態の事)の静脈瘤 (4)びらんや潰瘍形成を認める静脈瘤 (5)急速に増大傾向にある静脈瘤では速やかに内視鏡治療を開始する必要があると定められています。食道静脈瘤が破裂し治療が遅れると、出血性ショック、誤嚥性肺炎、急性肝不全等で死亡することもまれではありません。

治療方法の概略・麻酔方法について

内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL=endoscopic variceal ligation)

内視鏡(胃カメラ)を用いて直接静脈瘤を結紮する方法です。先端にゴムバンドが装着されたEVL専用の透明なキャップを取り付けます。内視鏡で食道静脈瘤を吸引(充分に吸い込んで)し、その根元をゴムバンドで結紮(食道静脈瘤を縛ること)します。結紮する事により食道静脈瘤に血栓性閉塞(血液が固まり静脈瘤が消失する事)が起こり、静脈瘤が消失します。この方法の利点としては、(1)侵襲が少なく安全で(高度肝障害を認める症例でも可能)手技が簡単である (2)出血静脈瘤に対して治療が出来る があります。欠点としてはEVL単独治療における短期再発率が他の食道静脈瘤硬化療法(EIS)より高いと言われている点です。短期間で再発を繰り返す症例に対してはEVLに追加して地固め療法を行ったり、EVLとEISを併用し治療を行う場合もあります。

内視鏡的静脈瘤結紮術

内視鏡的硬化療法(EIS=endoscopic injection sclerotherapy)

内視鏡を用いて食道静脈瘤に直接硬化剤を注入する方法です。具体的には内視鏡先端にバルーンを装着します。バルーンを膨らまして硬化剤が口側に流れないようにしてから、静脈瘤穿刺針(内視鏡から出し入れ可能な専用の針)から可能な限り直接静脈瘤に(血管内に)硬化剤を注入します。血管内注入が困難になったら、血管外注入(食道粘膜~粘膜下層に硬化剤を注入すること)を行います。硬化剤は血管内注入用(EO=monoethanol amine oleate)と血管外注入用(AS=Aethoxysklerol)があります。高度肝障害例(総ビリルビン値4.0mg/dl以上、血小板数2万以下、血性アルブミン値2.5g/dl以下)、大量腹水貯留例、高度肝性脳症症例、高度腎障害症例では硬化剤による副作用による肝不全を助長する可能性がある為硬化療法の適応にはなりません。

結紮と硬化の併用療法(EISL⇒EIS・EVL同時併用療法)

食道胃接合部付近の静脈瘤の上流の部位をEVLにて結紮し、EVLで結紮した静脈瘤の根部から硬化剤EOを注入し治療します。EVL/EIS治療終了後に止血剤を散布し終了です。大きな利点としてはゴムバンドで血流が遮断される為、硬化剤が最大限に効果を発揮され、硬化剤使用量を減量でき、静脈瘤治療回数を減らす事ができると報告されています。

いずれの内視鏡治療も鎮静剤(眠たくなるお薬)と鎮痛剤(痛み止め)を点滴で投与して意識がない状態で治療を行います。

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