更新日:2021年04月01日
B型肝炎では核酸アナログ製剤、C型肝炎ではインターフェロン(ペグ・インターフェロン)とリバビリン、プロテアーゼ阻害剤の併用療法が行われて来ましたが、2014年9月から経口薬であるダクラタスビル、アスナプレビル(商品名:ダクルインザ、スンベプラ)の治療が始まりました。2015年8月にはソホスブビルとレジパスビルという2種類の薬の配合錠(商品名:ハーボニー)という90%台後半の治癒率が得られる画期的な内服薬が使用可能となりました。また2015年11月にムビタスビル+パリタプレビル+リトナビルの3種類の配合錠(商品名ヴィキラックス)が使用可能となりました。治療の難しかった時代を経て、C型肝炎は現在では高い確率で治癒が望める時代になりました。その為にはウイルスの遺伝子型や特定の遺伝子変異解析、ウイルス量、今までの治療歴、患者さんの年齢、肝疾患以外の病気の合併などを総合的に判断して患者さんに最適な治療法を選択する必要があります。
また、これまでにインターフェロンが効かなかった人や、インターフェロンの副作用で治療が完遂できなかった人、インターフェロン時代の治療の奏功率や治療費などの問題でC型肝炎治療をあきらめた人、現在も肝庇護療法を続けているものの病状のコントロールが上手くいっていない人などに治療を行っています。
肝硬変とはひとつの独立した疾患ではなく、種々の原因によって生じる慢性・進行性肝疾患の終末像ととらえられています。自覚症状として黄疸、腹水の貯留、肝性脳症などの症状を伴う非代償性肝硬変とこれらの自覚症状の無い肝臓の予備能力のある程度保たれている代償性肝硬変に分類されます。原因となる肝障害の根本的な治療が何より重要ですが、食事療法、排便コントロール、特殊アミノ酸製剤の投与や利尿剤の投与などを症状に応じて適宜行う必要があります。また進行した肝硬変は肝細胞がん発症する高リスク状態であるため早期発見・治療ができるよう定期的に血液検査に加え、超音波検査・造影CT検査・造影MRI検査などの画像検査も定期的に行う必要があります。
肝細胞がんとは肝臓を構成する細胞の1つである肝細胞が悪性化しておこるがんです。日本では肝細胞がんの患者さんの68%がC型肝炎ウイルスに感染しているという報告があります。C型肝炎ウイルスによるC型慢性肝炎、C型肝硬変では、肝細胞がんが発生しやすいといわれています。C型慢性肝炎、C型肝硬変以外の危険因子には、B型慢性肝炎、B型肝硬変、男性、高齢、アルコール摂取などがあげられますが、近年アルコール摂取がないのにも関わらず肝機能異常を指摘され、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が原因で肝硬変や肝細胞がんを認める人が増えています。
当科では、超音波検査(造影超音波検査)・造影CT・造影MRI検査により肝腫瘍の診断を行い、肝細胞がんの早期発見に努めています。当科では経皮的局所治療(ラジオ波焼灼術(RFA)、エタノール注入療法(PEIT))、肝動脈化学塞栓術(TACE)や肝動注化学療法(TAI)などのカテーテル治療、化学療法(抗がん剤治療や分子標的治療薬内服(ネクサバール))などから最適な治療法を選択します。
経皮経肝ラジオ波凝固療法(RFA)は超音波装置で確認しながら治療針を腫瘍まですすめ、熱で腫瘍組織を凝固・壊死させる治療法です。超音波装置で腫瘍の位置、大きさを確認の上、穿刺ルートを決定します。皮膚の表面を局所麻酔し、穿刺ルートにあわせてラジオ波治療針を腫瘍部に挿入し、通電を行い焼灼します。1回あたりの治療時間は準備を含めて1時間程度です。局所麻酔と併用して点滴による鎮痛剤の投与を行います。
経皮経肝エタノール注入療法(PEIT)はRFA同様に超音波装置で腫瘍を確認しながら治療針を腫瘍まですすめ、エタノールを注入することで腫瘍組織を壊死させる治療法です。RFAが困難で腫瘍のサイズが小さい時に検討する方法です。
当院では入院でRFAを行なう場合に関して独自のクリニカルパスを作成し使用しています。
腫瘍を栄養する血管を探し、その血流を止めて腫瘍の発育抑制と症状を緩和する事が目的です。X線で確認しつつ、カテーテルとよばれる細い管を足の付け根から動脈に挿入し、腫瘍の近くまでカテーテルを到達させてから、抗がん剤や油性の造影剤と一緒に塞栓物質を栄養血管の中に流し込みます。そのほか、抗がん剤を吸着させた球状の塞栓物質(薬剤溶出性ビーズ)を用いることもあります。肝細胞がんは、血液の遮断による効果と抗がん剤による効果によって壊死します。
原因不明の肝機能障害としてご紹介をいただくことが多く、画像診断、組織診断を含め適切な診断治療を行います。
アルコール性肝障害につきましても外来で経過観察・治療を行っておりますが、依存症の治療はアルコール専門医療機関での診療をお願いしております。
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